column コラム
職員研修・組織づくり 2026.10.02
義務化で自治体はどう動く?小規模自治体でも進む「カスハラ対策」と現場を守るルール作り
自治体現場で高まる「カスハラ対策」の緊迫度
株式会社TOWN FIRSTの内村です。
近年、ニュースやビジネスの場で大きな話題となっているのが「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」です。民間企業では2026年10月1日施行の改正労働施策総合推進法に基づく、カスハラ防止措置の義務化により、マニュアル策定や体制整備が進められています。
しかし、カスハラ対策が真に急務なのは、実は民間企業以上に「自治体」の現場です。 毎年のように全国の自治体で発生している不当要求や暴言に対し、「公務員だから」「住民対応だから」と個人の耐性に頼る時代は終わりました。
いざという時に職員が焦らず対応できるよう、普段から研修や訓練を行い、万が一、被害に遭った後のアフターケアまでを含めた「組織的対策」を講じることが求められています。本記事では、元自治体職員としての実体験も交えながら、自治体が今取り組むべきカスハラ対策について解説します。
1. データと体験談で見る「自治体カスハラ」のリアル
自治体におけるカスハラは、職員の離職やメンタル不調に直結する「重大な組織リスク」です。
総務省の各種ハラスメントに関する調査によると、自治体職員が過去3年間にカスハラを経験した割合は35%に上ります。これは民間企業における被害割合(約12〜15%前後)と比較しても約3倍という極めて高い水準です。
【元自治体職員としての視点】
私自身も自治体職員時代に、激しい暴言や執拗な不当要求といったカスハラ被害を直接経験しました。窓口で何時間も怒号を浴びせられる恐怖や、個人を特定されて攻撃される精神的圧迫感は、対応する職員個人の心を簡単に折ってしまいます。自治体は民間企業と異なり「住民を選べない(拒否しにくい)」という構造的弱みがあるからこそ、より堅牢な組織の守りが不可欠なのです。
2. 全国で多発する自治体カスハラの具体事例
不当要求やハラスメントは、一部の特殊な自治体だけでなく、全国のあらゆる役場で日常的に発生しています。
事例①:大量の請求・面談要求と暴言の繰り返し(2016年6月発生)
情報公開請求や質問、電話、面談要求などの権利行使の形をとりながら、その過程で職員に対し暴言や侮辱的・脅迫的発言、実現不可能な過大要求を執拗に繰り返したケース。
事例②:庁舎内での不退去と警察臨場(2023年2月発生)
市役所内で職員から再三にわたり退去を求められたにもかかわらず、無言で寝転ぶなどして拒絶。通報を受けて駆けつけた警察官に対しても大声で「帰らへんぞ」と叫び、業務を著しく阻害したケース。
事例③:自宅への呼び出しと謝罪の強要(2024年6月発生)
事業に携わる人物が担当者の対応に不満を持ち、1年以上にわたって役場窓口等で抗議。さらに夜間に職員2人を自宅に呼びつけ、脅迫的な言動で謝罪を迫ったケース。
これらの事例に共通するのは、「要求内容の正当性」を逸脱し、過度な態様で職員を精神的に追い詰め、公務そのものを停滞させている点です。
3. 「個人の対応」から「組織と社会の責務」へ:広がる法制化・条例化の潮流
カスハラ対策は、もはや「職員個人の心がけ」で解決できるフェーズを過ぎ、「社会と組織の責務」へと大きく変化しています。
国の動向:2026年10月施行のカスハラ防止指針
厚生労働省が策定した防止指針(改正労働施策総合推進法に基づく)により、企業等に義務づけられる主な措置は以下の4点です。自治体の職場環境整備においても、この4原則が標準となります。
1.方針の明確化と周知・啓発(組織としてカスハラを許容しない姿勢の明示)
2.相談体制の整備(職員が安心して声を上げられる窓口の設置)
3.事後の迅速かつ適切な対応(被害発生時の事実確認と職員保護)
4.抑止のための措置(マニュアル作成や研修などの予防策)
自治体の動向:小規模自治体にも広がる「カスハラ防止条例」
東京都などの都道府県レベルにとどまらず、地域に密着した小規模自治体(群馬県嬬恋村、中之条町、静岡県長泉町、茨城県城里町、島根県美郷町など)においても「カスハラ防止条例」や基本指針を制定する動きが広がっています。条例化により、「職員を守る姿勢」を対外的に明確に打ち出す自治体が増えています。
4. 現場を守る「初期対応の鉄則」と「組織的チームプレイ」
カスハラに直面した際、現場の職員が迷わず毅然と対応するためには、明確な行動指針が必要です。
①「全体の奉仕者」としての毅然とした姿勢
特定の住民の言いなりになることは、他の住民への公平・公平な行政サービスの低下を招きます。不当な要求を毅然と断ることこそが、公務員としての正しいあり方です。 たとえ住民の主張や要求内容自体に一部理があったとしても、暴言や威嚇など「手段・態様が不相当」であるならば、それは明確にカスハラとして扱わなければなりません。
② 初期対応におけるコミュニケーションと言葉選び
・「限定的傾聴」の実践
住民の感情に流されるのではなく、「不快な思いをさせたこと」という心情にのみ限定して共感し、不当な要求そのものは受け入れない(事実と感情を切り離す)。
・「お役所言葉」の脱却
曖昧な表現や機械的な拒絶は相手を不必要に刺激します。誠実かつ明確に「これ以上のお答えはできません」と一線を引く。
・打ち切り文句の共有
対応を終了する際の決まり文句(例:「これ以上のご要望にはお応えできませんので、本日の対応は終了いたします」)をあらかじめ組織で定めておく。
③ 小規模庁舎だからこそ活きる「チームプレイ」
個人の孤立を防ぐため、以下の運用を組織ルール化することが重要です。
・異変の早期察知と連動
周囲の職員が不穏な空気を察知したら、すぐに録音・録画の手配や複数対応へ切り替える。
・上司引き継ぎの基準化
「〇分以上経過」「大声・暴言が出た時点」など、上司へ引き継ぐ定量的・客観的なタイミングを設定する。
・退去命示・対応中止の客観的基準
庁舎管理権に基づき、住民対応を中止・退去を命じるルールを明確化しておく。
・プライバシー保護
名札のフルネーム表記の見直しや、職員の個人情報を守る措置を講じる。
これらを一冊にまとめた「カスタマーハラスメント対応マニュアル・指針」の策定が、組織防衛の第一歩となります。
5. 一人で抱え込ませない「アフターケア」と「不調の早期発見」
カスハラ被害を受けた職員の「心の傷」は目に見えません。対応が終わった後のフォロー体制がないと、職員は孤立感を深め、休職や離職につながってしまいます。
組織として実施すべきアフターケア
・上司・同僚からのねぎらいと声かけ
「大変だったね」「組織として対応するから大丈夫」という言葉で職員の心理的安全性を確保する。
・メンタルヘルス相談窓口の周知
迅速に専門家や産業医に相談できる体制を整える。
メンタル不調を示す「2〜3つのサイン」を見逃さない
ストレスチェックや職場アンケート、定期的な個別面談を通じ、職員の変化にいち早く気づくことが大切です。以下のような「いつもと違う様子」が2〜3つ見られたら、それは限界が近いサインです。
・行動の変化
遅刻・早退・欠勤が増える、挨拶や返事が小さくなる
・作業の変化
普段生じない凡ミスが増える、判断力・集中力が低下している
・態度の変化
表情が暗い、口数が急激に減る(または急に苛立ちやすくなる)
早期に発見し、業務量の調整や休暇取得を促すことが、貴重な職員の職務と健康を守ることにつながります。
6. いつでもご相談を:TOWN FIRSTが皆さまの自治体に伴走します
職員と職場を守るため、自治体においてもカスハラ対策の推進は待ったなしの課題です。
「どこから手を付ければいいかわからない」「カスハラ対策の研修を実施したい」「小規模な役場なので、現実的に運用できるマニュアルを作りたい」といったお悩みはありませんか?
株式会社TOWN FIRSTは、小規模自治体に特化した業務支援・研修支援を行う専門企業です。元自治体職員が在籍しているため、現場の実態や特有の庁舎環境・人間関係を熟知したうえで、実効性の高いサポートを提供いたします。
提供可能メニュー
・庁内カスタマーハラスメント対応マニュアル・指針の策定支援
・自治体職員向け カスハラ初期対応研修
・日頃の住民対応・ハラスメントに関する個別相談対応
職員の皆さんが安心して働ける職場環境づくりに向けて、私たちが丁寧に伴走いたします。
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