column コラム
DX・業務効率化 2026.04.03
自治体DX推進計画、どこから始める? 現場を知る支援者が整理する課題と突破口
TOWN FIRSTの内村です。
4月に入り、多くの自治体で新年度がスタートしていることと思います。
私が見てきた、自治体DXの「前」と「今」
私はかつて小さな町の自治体職員として働いていました。その当時はDXというワードは誰も口にしていませんでした。前例踏襲のまま、決裁作業や分厚い会議資料を作成していたのを覚えています。
私は、町役場を退職後、民間の調査会社で働いておりました。調査会社在籍時には多くの自治体を営業訪問してきましたが、DX推進計画を策定している自治体は数えるほどだったと思います。また、小規模自治体に限っていえば、私が訪問した中では策定している自治体はありませんでした。
それから10年以上経ちますが、業務の形は変化を見せています。議会でのタブレットの導入による議案書のペーパーレス化や各種行政手続きのオンライン化など、業務の効率化は着実に進んでいます。
DX推進計画の策定状況
自治体によってはDX推進計画を策定するなど、先行してDXの推進を進めている自治体がある一方で、計画を策定していない自治体も多々見られます。
自治体DXは、職員不足や住民ニーズの多様化に対応するための喫緊の課題
現在、多くの自治体で職員不足や住民ニーズの多様化への対応が大きな課題になっています。そこをカバーするべく、国が中心となって様々な取り組みが進められています。
現在の主な自治体DXの動向と具体的な施策について整理しました。
1. 重点的に進められているデジタル化施策
自治体情報システムの標準化・共通化
これまで各自治体が個別に開発・運用してきた基幹系システム(住民基本台帳、税、福祉など)を、国が策定した標準仕様に準拠したシステムへ移行する取り組みです。
- メリット:運用コストの削減、自治体間のスムーズなデータ連携、法改正時の迅速な対応
- 目標:2025年度(令和7年度)までの移行を目指し、ガバメントクラウド(Gov-Cloud)の活用が進められています。
行政手続きのオンライン化
「行かない・書かない・待たせない」役所の実現に向けた取り組みです。
- マイナポータルとの連携:子育てや介護などの主要な手続きをオンラインで完結
- キャッシュレス決済:窓口での手数料支払いにQRコード決済やクレジットカードを導入
AI・RPAの活用による業務自動化
定型的な単純作業をデジタル技術に代替させ、職員がよりクリエイティブな対人サービスや政策立案に注力できる環境を整備しています。
- RPA(Robotic Process Automation):データの転記、照合、大量の通知書作成などの自動化
- 生成AIの活用:議事録作成の補助、広報文案の作成、Q&A対応(チャットボット)の精緻化
2. 業務効率化を阻む壁と突破口
多くの自治体が直面している課題と、その対策は以下の通りです。
- 課題:専門人材の不足 → 対策:外部人材の登用、近隣自治体との共同利用・広域連携
- 課題:レガシーシステムの存在 → 対策:標準化を契機としたシステムの刷新と、不要な独自ルールの廃止
- 課題:組織文化・意識の乖離 → 対策:「デジタル化=手段」という認識の共有、スモールスタートによる成功体験の積上げ
3. 今後の方向性:地域課題の解決へ
デジタル化の真の目的は、内部事務の効率化だけでなく、それによって生まれたリソースを地域活性化や住民福祉の向上に充てることです。
- データ駆動型行政(EBPM):蓄積されたデータを分析し、根拠に基づいた効果的な政策を立案する。
- スマートシティの推進:交通、防災、医療などの分野でICTを活用し、持続可能な地域づくりを行う。
特に小規模な自治体においては、限られた人員でいかに「標準化」の波を乗りこなし、独自性を出すかが重要になります。
今後、どの自治体においても大幅な職員の増加は見込まれない状況です。若手職員の早期退職などによる職員数の減少やより複雑化する住民ニーズへ対応するためには、自治体DXの推進が今後ますます重要なものになってきます。
自治体DXの具体的な事例
小規模な自治体でも参考にしやすい、成果が明確なケースをいくつか紹介します。
1. 「書かない窓口」と手続きの完全デジタル化|和歌山県 紀の川市
マイナンバーカードを活用した「書かないワンストップ窓口」を導入しています。
- 取り組み:転入・転出などの複雑な手続きにおいて、カードから情報を読み取ることで住民の記入を不要にしました。
- 効果:窓口での滞在時間を大幅に短縮し、複数の課を回る手間を削減。住民満足度の向上と、職員の入力・確認ミスの防止という両面のメリットを生んでいます。
2. 小規模自治体でのリソース最大化|島根県 江津市
人口2万人規模の自治体ながら、「2026年度末までに全職員がITパスポートを取得する」という目標を掲げ、組織全体のデジタル・リテラシー向上を図っています。
- 狙い:外部のITコンサルに頼り切るのではなく、現場の職員自らが業務課題をデジタルで解決できる「内製化」を目指しています。
- 特徴:受験料の公費負担や、庁内での自主学習会の開催など、学習環境の整備に力を入れています。
3. 広域連携でコスト削減|北海道 蘭越町・ニセコ町・倶知安町
近隣の3町が連携し、観光客向けのAIチャットボットを共同導入しています。
- 背景:1つの町村では負担が大きい多言語対応を、広域連携によって低コストで実現。
- メリット:個別の自治体で開発・運用するコストを抑えつつ、地域全体の回遊性を高めるデータ利活用が可能になりました。
これらの自治体が成果を出している背景
- スモールスタート:最初から全庁一斉ではなく、特定の課や手続きから導入し、成功体験を共有する。
- BPR(業務の再設計):紙の運用をそのままデジタル化するのではなく、そもそもその手続きが必要か、簡素化できないかを問い直す。
- 官民共創・広域連携:自前ですべてを抱え込まず、外部の専門知見や近隣自治体とのシステム共同利用を積極的に活用する。
計画策定支援や先進事例紹介等のお手伝い
私はこれまでに多くの自治体の計画策定業務に携わってきました。上述したとおり、官民共創・広域連携は今後より重要なワードになってくると思われます。
弊社では計画策定に係る部分的な支援や先進事例紹介等のスポット的な支援も行っております。
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